■急性の肝(かん)機能障害 ウイルス性肝炎について
急性の肝機能障害を起こす病態としては、非ウイルス性の肝機能障害とウイルス性の肝機能障害に大別されます。
非ウイルス性の肝機能障害の代表としては、薬剤性肝機能障害、アルコール性肝機能障害、非アルコール性脂肪性肝機能障害、自己免疫性肝機能障害等があります。中には、意外にも自覚症状が軽い場合もあり、健康診断で診断されることもあります。自覚症状としては、感冒様(かんぼうよう)症状や全身倦怠感、食欲不振、嘔気(おうき)等で、黄疸(おうだん)を呈(てい)してから気づく場合も少なくないです。
※野菜ジュースの飲みすぎによる皮膚の黄染(おうせん)で受診する方がいますが、これは黄疸とは異なるものです。
ウイルス性肝機能障害は、いわゆる肝炎ウイルス(A~E型の5種類が判明されている)と、その他のウイルスの感染により発症するもので、解明されていないものもあります。
※最近、小児の急性肝機能障害が世界で報告されたことで注意喚起されており、一部の例でアデノウイルス(咽頭(いんとう)結膜熱を起こす原因ウイルス)が検出されていますが、病因は解明されていません。
肝炎ウイルスの中のA型とE型は、ウイルスを経口摂取(けいこうせっしゅ)することで感染するもので、A型の感染源は牡蠣(かき)などの海産物等、E型は不適切な加熱処理のジビエ料理、豚、猪(いのしし)、鹿肉など(人畜(じんちく)共通感染症)で感染します。B型とC型、D型は血液・体液を介しての感染で、不衛生な刺青(いれずみ)、ピアスの穴あけ、性交渉等によるものですが、輸血や医療機関での医原性感染の危険性はほぼなくなっています。
※E型ウイルスは輸血での感染が毎年数例報告されています。
A型ウイルスは無症状期や肝炎後も数週間便への排泄があり、家庭内、施設内感染や性交渉での感染が問題となります。
※最近、世界で報告例が急増したサル痘(とう)のウイルスも、サル痘報告例のある国の滞在歴や滞在先で他者との性的接触を含む濃厚接触があった場合に、危険性があるとされています。
なお、福生市の肝炎ウイルス検査は10月31日(月)まで実施中です。
文責:西村医師