■心不全(基本編)について
心不全とは「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり生命を縮める病気」です。5年生存率は約50%と予後不良で、ほぼ大腸がんの予後と同等と考えられています。
2020年(令和2年)の日本における心不全患者数は約120万人と推定され、2035年まで年々増加すると推測されています。この状態を感染症大流行に例えられ「心不全パンデミック」と警戒されています。
症状は、むくみ、息切れ、体重増加、倦怠感(けんたいかん)などです。診断は、診察所見(聴診含む)、パルスオキシメータ(酸素飽和度)、心電図、胸部レントゲン、血液検査(BNP…脳性ナトリウム利尿ペプチド)、心エコーがあります。BNP(pg/mL)とは、心臓に負担がかかったときに、主に心臓(心室)から分泌されるホルモンで、100以上で心不全の疑い、200以上で心不全の可能性が高いと考えられます。患者さんの状態によっては、心臓CT・MRI・核医学検査での精密検査が必要な場合もあります。
心不全リスク因子として高血圧、糖尿病、動脈硬化などがあります。特に心肥大(しんひだい)、弁膜(べんまく)症、心房細動(しんぼうさいどう)、虚血性(きょけつせい)心疾患(狭心(きょうしん)症・心筋梗塞(しんきんこうそく))などの器質的(きしつてき)心疾患(心臓の働きに異常)は、心不全発症に注意が必要です。
心不全(発症前を含む)には、A(症状なし…心不全リスク因子のみ)、B(症状なし…器質的心疾患あり)、C(症状あり)、D(症状あり…治療が難しくなる)の4つのステージがあります。A・Bが心不全発症前で、C・Dが心不全発症です。
AからDと進行するに従い、予後不良になるので心不全に関連する疾患に対し、早期発見・治療をしてステージを進行させないことが大切です。
心不全予防の生活上の注意点は、減塩、肥満解消、運動、禁煙、節酒、ストレス軽減です。特に高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症のある方は、すべての疾患に対し、包括的治療が心不全発症予防となりますので、かかりつけ医と相談しながら治療を継続していきましょう。
文責:波多野嗣久(はたのつぐひさ)医師