■ニコニコペース運動の勧め
運動というと苦手なイメージを持たれる方が多いと思われますが、アスリートが行う身体機能向上のための運動と、一般の人が行う健康維持のための運動とでは、その強度が異なります。ニコニコペース運動とは、笑顔を保って行えるようなゆっくりしたペースでの有酸素運動のことです。つまり、疲労物質である乳酸がたまらずに運動を続けることができる強さであると言えます。
運動の強さを表す単位に「メッツ」というものがあり、座って安静にしている状態が1メッツで、普通歩行が3メッツに相当します。ニコニコペース運動はこの3メッツに相当するものです。目安となるのが心拍数で、「138-(年齢÷2)」程度と言われています。最近では、スマートフォンやスマートウォッチなどで簡単に測定できるようになっています。
ニコニコペース運動によってもたらされる効果としては、降圧効果が期待できます。運動により、必要となる酸素や栄養を筋肉に運ぶために、血管が拡張して血圧は下がります。交感神経の緊張も緩(ゆる)められ、降圧効果が期待されます。
また、運動により善玉(HDL)コレステロールが上昇し、悪玉(LDL)コレステロールを下げる効果があるため、動脈硬化の改善が期待されます。さらに、有酸素運動には筋肉でのインシュリン抵抗性を改善し、血糖値を下げる効果もあり、糖尿病の指標であるHbA1cの改善が期待されます。また、がんや運動器の低下によるロコモティブシンドローム、認知症の予防効果も期待できます。
このように、健康維持に有効なニコニコペース運動ですが、場合によっては運動が逆効果になることがありますので、医療機関にかかっている方は、運動を始める前に主治医とよく相談してから開始してください。医療機関にかかっていない方は、厚生労働省ホームページに掲載されている「身体活動のリスクに関するスクリーニングシート」でリスクがないことを確認してから始めるようにしてください。
文責:津田医師