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-focus-福生人(ふっさびと)

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東京都福生市

■繋いでいく技術
柘植表具店 柘植守(つげまもる)さん

◇年齢を重ねてこそ想うようになった「技術継承」
銀座通りの中ほど、志茂(しも)の表具屋さんから、今日も作業の音が聞こえる。覗(のぞ)き込むと、見えるのは、集中して作業を行っている柘植守さん。
襖(ふすま)や障子(しょうじ)、掛け軸(かけじく)、屏風(びょうぶ)等の張替え・修理を行う「表具師(ひょうぐし)(経師屋(きょうじや))」としての職人人生は、高校を卒業後、18歳から現在まで56年にも及ぶ。
父親から跡を継いだ柘植さんも、現在は息子さんの工(たくみ)さんへ代替わりし、親子三代にわたり、福生の老舗(しにせ)「柘植表具店」として看板を掲(かか)げている。
「和室のある住宅が減ったことにより、数十年前から屏風の注文依頼が激減しました。このことで一番残念なのが、次の世代へ屏風づくりを継承する機会が減ったこと。」
そこで柘植さんが考えたのが、玄関の棚などに置けるインテリアとしての小さな「玄関屏風」だ。
「今後『屏風』という言葉は、死語になるかも知れない。だけど、小さな置物として玄関にだけでもあることで、屏風は人から忘れられないかも知れない。年齢を重ねていくと、『自分の技術を遺(のこ)していって欲しい』という想いがだんだん出てくるものなんですよ。」

◇20年来の夢であった展示会を初開催
「自分の制作した玄関屏風の展示会を開催してみたいという、20年来の夢がようやく叶いました。」
去る11月3日~5日の3連休に、市内寺院の清岩院(せいがんいん)において入場無料で開催された「『ひらく掛け軸と屏風』~熟練表具師とアメリカ人の二人展~」。
米国ミルウォーキー出身の画家である、コール・ノートンさんとのコラボレーション企画は、盛況のうちに幕を閉じた。
日本画・水墨画の修行で、現在、青梅市に移住しているノートンさんは、昨年から柘植さんに掛け軸制作の技術を学んでおり、今回の展示会に至ったという。
この展示会では、柘植さんが制作した玄関屏風をはじめ、置き型照明などのさまざまな表具40点以上と、ノートンさんの絵画や屏風、掛け軸など約20点が、展示され、会場の清岩院会館を2フロアにわたり彩っていた。
たくさんの来場者へ、自ら丁寧に作品の説明していた柘植さんとノートンさん。ここでは、「屏風」、「掛け軸」という日本伝統の表具が醸(かも)し出す「和」の美しさに、思わず見入っている来場者が印象的であった。
柘植さんは言う。「たくさんの人に屏風という日本の文化を見てもらって、その良さを感じてもらいたい。昔の人は、四季に合わせて玄関などを飾っていました。こういったものを玄関に置く『遊び心』があると、心に少し余裕が生まれると思うんです。」

◇職人芸の光る柘植さんの七夕飾り
柘植さんといえば、もう一つの顔としてあるのが、七夕まつりに掲出する手の込んだ「竹飾り」だ。
これまでの、飾り付けコンクールでは毎年のように賞を受賞してきている。
七夕まつりで銀座通りを歩いたことがある方は、一度は目にしたことがあるのでは。
「竹飾り制作を始めたのは、学校を卒業して今の仕事を始めてから。仕事を終えてから、夜コツコツと飾りに付ける花を折るので、約3か月前から制作を開始しています。」
なんと、一つのくす玉飾りに1,000を超える花が使用されているそうだ。
来年も七夕まつりが開催されるようであれば、きっと柘植さんの新たな作品に出会えることであろう。

       

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