■貧血((鉄分の少ない血液)
貧血は、血液中で酸素を運ぶ赤血球の量が少なくなることです。一般的に多くみられるこの状態は、まだ病気ではなく、身体からの危険信号です。危険信号のみを解決しようとすると、その裏側に潜(ひそ)む本当の原因を見逃すことになります。
場合によっては、骨髄(こつずい)で造られる赤血球の数が少ない場合もありますし、血液や脾臓(ひぞう)で赤血球が壊(こわ)される数が多すぎる場合もあります。しかし、最も多いのは赤血球の中の鉄分が少ない場合です。さらにその原因は摂取(せっしゅ)する鉄分が少ないのではなく、出血による場合が圧倒的です。通常は、ポリープ、潰瘍(かいよう)、膀胱炎(ぼうこうえん)、またはがんによる非常にゆっくりとした慢性(まんせい)的な出血が原因になっています。慢性的な出血は、アスピリンやイブプロフェン、非ステロイド系抗炎症剤の常用による場合もあります。
非常にまれですが、鉄欠乏(てつけつぼう)性貧血の原因の一つに食物から鉄分が十分に得られていない場合もあります。ただし、完全菜食主義やごく一部の女性では十分考えられる状態です。自分で勝手に鉄欠乏性貧血であると判断し、勝手に補強剤(鉄剤)を使い始める事にはさまざまな弊害(へいがい)があります。
その理由として、(1)典型的な複合ビタミン剤に含まれている鉄の量は、貧血を治療するためには少なすぎます。ビタミン剤を使用し始めたとたん、貧血が治ったと勘違いする人が多くみられます。(2)複合ビタミン剤などの補助剤を使い始めると、ほかの疾患(しっかん)の発見が遅れます。便の色が黒ずみ、消化器系からの出血の危険信号を見逃す可能性もあります。(3)薬局で購入できる鉄分補強剤には、複合ビタミン剤の7倍近い鉄が含まれているものもあります。
しかし、補強剤の使用に際しては、医師の診断のもと適切な量の鉄分補強剤を使用するべきであると思います。もし仮に、貧血でなかった場合、鉄分の摂(と)り過ぎは、肝臓、膵臓(すいぞう)、心臓に対して、重大な障害をもたらす場合があります。
以上、顔色が悪い、疲れ易(やす)い、動悸(どうき)、立ちくらみ等の症状があり、貧血が疑われる場合は、医療機関に相談し貧血の原因を精査し、適切な治療を受けることをお勧めします。最近では外来での鉄剤の点滴回数を少なくできる薬剤もあり負担も少なくなってきています。
文責:青山医師