■マダニを介した感染症(特に重症熱性血小板減少症候群(SFTS))への注意
日本に生息するマダニはおおよそ47種あり、そのうち複数のマダニが人への感染に関与しています。人が宿主で人から人へのヒゼンダニ(疥癬(かいせん)を発症)、宿主のネズミが潜(ひそ)む家のイエダニ(皮膚(ひふ)炎)、衣類・寝具のヒョウヒダニ(アレルギー・喘息(ぜんそく))など、家屋内に生息するダニと草むらや藪(やぶ)など野外に生息するマダニとは種類が異なります。
マダニによって媒介される感染症には、SFTS(年間100件前後)、日本紅斑(こうはん)熱(年間400件前後)、ライム病(年間30件前後)、つつが虫病(年間500件前後)、ダニ媒介脳炎(2019年から報告なし)などがあります。
特にSFTSは報告数も最近増加傾向にあり、報告地域も全国的に拡大しており、致命率が10~30%で特に高齢者では高くなっており侮(あなど)れません。
SFTSについて、感染経路は(1)SFTSウイルスを保有しているダニに刺される(2)SFTSウイルスに感染したペットの猫、犬等との接触(3)SFTSに感染した人との血液、体液の接触があります。健康な猫、犬や屋内のみで飼育されている猫、犬からの感染の事例の報告はありません。動物由来食品を食べてSFTSに感染したという事例の報告もありませんが、鹿、猪等の野生動物や猟犬の血液検査でSFTSウイルスに対する抗体がある動物が確認されていますので、野生動物を食用にする場合(ジビエ料理)は、動物由来感染症や食中毒を防ぐために衛生的処理が十分な加熱調理等の適切な取り扱いが必要です。
SFTSウイルスに感染すると6日から14日の潜伏期間を経て、発熱・倦怠感(けんたいかん)・頭痛・食欲低下・嘔気(おうき)・下痢・腹痛などがみられ、重症化するとショック・呼吸促拍(そくはく)・意識障害・心筋障害・出血症状などの併発症が発生する恐れがあります。マダニの活動が活発な春から秋に多いのですが、冬季にも報告があり、草むらや藪などに入る時は注意し、刺された時は自ら処置せず皮膚科を受診してください。
補足:10月10日の報道で、東京都ではこれまで人への感染が2例報告されていましたが、10月10日にペットの犬への感染が東京都で初めて報告されました。
文責:西村曜(あきら)医師

