■疥癬(かいせん)
昨年末からインフルエンザを中心としたウイルス感染症が猛威(もうい)を振るっています。
一方、疥癬は小さなダニであるヒゼンダニが皮膚(ひふ)に寄生します。ギリシャローマ時代に記録があり、ナポレオン軍戦意喪失(そうしつ)の一因とされています。日本では、戦後の衛生状態、栄養状態の悪化により大流行しました。しかし現在でも高齢者施設や高齢者の多い病院で施設内感染があります。皮膚同士の直接的接触により感染します。また患者さんが使用した寝具、衣類が交換されない場合、間接的に感染します。皮膚内に掘った穴、毛包(もうほう)内に隠れているため、寄生部位の特定は難しいです。症状は強い痒(かゆ)み、赤いぶつぶつ(通常型)、牡蠣殻様(かきがらよう)に重積した垢(あか)(角化型)が手、足、陰部、肘(ひじ)、膝(ひざ)にみられます。人の体温はダニにとって生活に適していますが、皮膚から離れた場合は長くは生きられず、高温乾燥を嫌います。
検査は症状のある部位の一部を取り、顕微鏡で虫体、卵検出により診断されます。治療は軟膏(なんこう)、飲み薬です。軟膏は正常な部位も含め、塗(ぬ)り残しのないように首から下の全身に塗ります。特に手の指間、足、外陰部は念入りに塗ります。潜伏期が1~2か月ありますので、患者さんとの接触があった方は同時に治療を行う場合があります。飲み薬は駆虫(くちゅう)剤、かゆみに対し抗ヒスタミン薬を併用します。薬局で販売されているしらみ駆除(くじょ)剤は効果が不明です。
患者さんは通常型の場合、入浴は手足、外陰部をよく洗い、タオルは個人用として、パジャマ、寝衣は毎日交換します。角化型の場合、できれば個室での隔離が必要です。通常型で1か月、角化型で2か月後収束に向かいますが、前者は3か月、後者は6か月皮膚のチェックが必要です。発生時の対応は、職員は手袋、使い捨てガウンを着用し、使用したリネンはビニール袋に入れ、口を締め洗濯にだします。以上のことから、高齢者施設で職員を含め、かゆみの訴えが増えた場合、集団発生の可能性がありますので早めに病院を受診してください。
文責:瀬在秀一(せざいしゅういち)医師