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歯科医師会だより

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東京都福生市

■歯科予防の大切さ
皆さんはお歯黒(はぐろ)というものをご存知でしょうか?お歯黒とは明治初期まで続いた歯を黒く染める風習のことです。平安時代には貴族の象徴として成人男女に広まり、江戸時代にはその様相は浮世絵の中にも描かれ、美しい女性の象徴として高貴な婦人から花魁(おいらん)まで幅広く愛好されたのですが、この一見不思議な風習としか見えないお歯黒には、実は驚くべき科学的予防効果があったのです。
お歯黒の主成分はタンニン酸第2鉄塩です。沸騰させたお茶に焼いた古釘(ふるくぎ)を入れ、飴、麹(こうじ)、砂糖を加えて、これに「ふしの粉(こ)」を混ぜて房楊枝(ふさようじ)で何度も何度も歯を染めていくというものです。これには殺菌性があるため細菌の発育を抑え歯牙(しが)を強くし歯痛(しつう)を鎮(しず)めて虫歯の進行を阻止する効果があったそうで、江戸時代には虫歯の無い女性が多かったと言う事実があり、お歯黒の有効性がそこからも伺うことができます。タンニンには、抗酸化作用や収れん作用によるタンパク質と結合する性質などがあります。知らぬまに予防されていたのですね。
さて、平成元年に8020(ハチマルニイマル)運動(80歳になっても20本以上の自分の歯を保つことを目標とした運動)が開始されて早36年。同時期に日本と同じように虫歯や歯周病患者が多く、治療中心の歯科医療を行い歯を失なう人も多かったとされるスウェーデンは、今や世界で最も虫歯・歯周病が少ない国となりました。なぜこの差が生まれたのでしょうか。最大の理由はそれまでは虫歯になったら「治療」することが当たり前だった時代に虫歯を「予防」するという考え方に変え、それを国の政策として取り込んだということなのです。
20歳未満の国民は歯科健診と治療を無料で受けることができ、国民にも定期的な歯科健診を受けるよう促したのです。当然子どもの時から歯科健診の習慣が身についているため大人になっても歯科健診を受けることが当たり前になり、歯科医院での定期的なクリーニングと、自分自身での毎日のブラッシングも自然と身についたという事です。
皆さんも年に数回美容室に通うように、歯医者さんに治療ではなく予防のために定期的に通ってみてください。そしてぜひプロのテクニックPMTC(ピーエムティーシー)(歯科医師や歯科衛生士が専門的な技術や機器を使用して、歯の汚れを除去する方法)を受ける習慣を身につけてほしいものです。1本でも多くご自分の歯を保つことこそが、健康で長生きする1番の近道かと思いますので。
今からでも間に合います。本格的な予防歯科の取り組みを一人ひとり心がけていきましょう。

文責:田中歯科医師

       

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