■特別な存在ではなく、「一緒に進む仲間」として支えていきたい。
文部科学省の調査(※)によると、公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数はおよそ58,000人いると言われています。
福生市に本部を構えるNPO法人青少年自立援助センターが運営する「YSCグローバル・スクール」では、海外につながりを持つ子どもや若者への日本語学習、教科学習支援や就学・高校進学支援などを行っています。今回、YSCグローバル・スクールの統括コーディネーターであるピッチフォード理絵さんにお話を伺いました。
(※)参考:「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和3年度)」
◆YSCグローバル・スクール統括コーディネーター
ピッチフォード理絵さん
▽Profile
2010年のYSCグローバル・スクール立ち上げ時から海外につながりを持つ子どもや若者の支援活動に携わる。
―YSCグローバル・スクールとお仕事について教えてください
現在、地方からのオンライン受講も含めて、全体で約200人の「海外につながりを持つ子ども」たちが日本語や教科学習に取り組んでいます。平日の午前9時~午後7時の時間帯に、小学1年生から18歳くらいまでの子どもが、日本語学習支援や進学支援などそれぞれのクラスに通っています。
私は「多文化コーディネーター」の統括役として、外国人保護者と学校との間を取り持ったり、学校の先生と連携をしたりなど、「授業をする以外のすべてのこと」を日々行っています。
―「海外につながりを持つ子ども」とはどのような子どもですか?
基本的には国籍に関わらず、両親またはどちらかが外国出身者である子どもや若者のことを言います。その中には、例えば片言の日本語しか話せない外国人のシングルマザーのもとで育った、日本国籍の子どもなども含まれます。親から言語的なサポートがないので、お話はできても、学校の勉強についていくのが難しいという子どもはたくさんいるんです。
―海外につながりを持つ子どもたちが日本語でつまづくところは?
話すことよりも一番難しいのは「文字」。必死の思いでひらがなを覚えたと思ったらカタカナ、そして漢字も覚えないといけないので苦労しています。あとはおしゃべりの日本語ではなく、学校で使う日本語が難しい。算数で計算はできても文章題になると手が出ません。日本語は会話と読み書きの差が大きいので、子どもたちは苦労します。
小学校の勉強がようやくできるようになったのに、中学校に入ったら英語も習わなければならない。「日本語を学ぶだけ」ではなく、「日本語で次のことを学ばなければならない」というのが、子どもたちは本当に大変だと思いますね。
―日本にしかルーツを持たない私たちにできることは何ですか?
海外にルーツがあることは、日本社会だととても目立ちやすい「違う点」に見られてしまいますが、それを過大に特別視しないこと。あとは普段の言動を気にかけることです。例えばマイクロアグレッション(何気ない日常で言動に現れる偏見や差別)。外国人に対して、「納豆食べられるの?」、「日本語上手だね」とか、別に悪気はなく、逆に良かれと思って言ったことが「やっぱり自分は外国人扱いされているんだ」と、言われる側は傷つくんです。
―最後に、福生に住む日本人の方へメッセージをお願いします
福生は、まちの中にいろいろな人がいることに大人も子どももある程度慣れていて、それを特別視しない雰囲気があることが良さだと思っています。それでもやはりマイクロアグレッションなどが起きてしまうので、一人ひとりがあと一歩、良かれと思っている言動などを見直してみるとか、外国人に対する偏見を捨てて見方を変えたりできると、共生社会の実現に向けてもっと良い方向に進むことができるまちだと思います。
私たちも外国人も、ずっとこの先も同じまちで生活していくので、特別な存在ではなく、「一緒に進む仲間」という風に捉(とら)えて、お互いに支え合いながら暮らしていければいいなと思います。
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